爪を切る


爪を切る。


大切なものに触れるため。


伸びてきたら、切る。
昔は美しく伸ばし、綺麗に色を塗っていた。


自分が仕事をやり始めて、人様の身体に触れるようになった時。
教えて頂いたことがある。


「人の身体に触れる事は、その人の命に触れる事だ」と。


マニキュアを塗る行為は大好きな行為の一つであった。
おんなだよ、を感じさせる、とても厳かな行為。
服を決め、あわせて色を選び、丁寧に塗り、乾くのを待つ行為は、おんなにしか楽しめないものだ。(別に誰がやっていてもいいけど、一般的概念としては、の話)
それはそれでとても楽しくて大好きであった。


ハイヒール、マニキュア、美しく着飾る。
やり尽くした後に見えてきたものがあった。


だから、今は、爪を切る。


いちばん大切なものに触れるため。